昼間の就業時間中に社内に居て事務処理をすることにとても罪悪感を感じる雰囲気だった。女性アシスタントからもそんな視線でみられているような感覚もあった。本当は彼女たち一切そんな風には思ってはいなかったはずなんだろうけど、新入社員の営業マンは朝から晩までお客さんのところに居ろというのが上司や先輩社員からの指導だった。一番嫌だったのがアポとりだ。当時はEmailなんてものはなくて、コミュニケーション手段と言えばもっぱら電話だった。当然、スマホなんてないしお客さんであろうが夫婦間や恋人同士の通信手段はとにかく電話だった。しばらくしてポケベルが短い期間だったけど席巻した時期はあったけど、基本はあくまで電話だった。週末や週の始まりには電話をかけてアポイントを取り付けることに精を出したものだ。何度も何度も電話してやっと会ってくれるという約束を取り付けるのは相当タフで疲れる作業だった。アポがとれないと精神的にもきつい。一度、オフィスを出ると早く面談が終わっても途中、車の中やファミレスで時間つぶしをして会社に戻ったりもしたな。その背景にあったのが上司や先輩からこんこんと言われ続けた「社内にあるのは経費だけ」という教えだった。英語に言い換えれば「No business in the office, there is cost only.」と言ったところかな、そんなことを思いながら社内からメールでアポとりや仕事の進捗を管理している。便利な世の中になったもんだとつくづく思うのだ。
旧暦8月15日が中秋節です。今年は明日9月10日がその日にあたります。お昼休み前に総務の女性が今日はみんなで中秋節の飲茶ランチだよ。一緒に行こうと誘ってくれました。ということで久しぶりの飲茶してきました。事務所から歩いてローカルのレストランに着くと中秋節をお祝いしているような集まりが多くのテーブルいます。依然としてコロナ感染規制があってひとつのテーブルには8人までしか付くことができません。同じ営業の担当と一緒に男性ばかりのテーブルにつきました。あまり変わり映えのしない DIM SAM(点心)が一気に配膳されてだれかが声をかけてお茶で乾杯です。ひとしきりたわいもない話をしながら食べて一服したところでテーブルにいる若い同僚たちに聞いてみました。
最初はぼんやりとして質問として「Do you like China?」と言うと、中国は好きだよ。だって中国の技術力はすっごいよ。新幹線の駅の改札なんかは顔認識でだれも駅員はいないんだぜ。深圳の技術開発能力はとんでもないといった驚異的な技術力をまるで自分たちのことのように自慢していました。それから話題も和んだところで「How about national security law?」と聞いてみました。一瞬テーブルに居た全員が言葉を発せず気まずい一瞬の「間」が出来ました。「まずかったかな」と内心思っていると若手の一人が「It’s good for China」というとさっきの間が一気に笑いにほどけました。当然、テーブルについている全員が私のことを日本人と認識していて過敏になる必要はないと思っているはずです。将来の自由に対してはどう?と聞くと「Nobody knows future.」とのことでした。私には全員がどことなく寂しそうな顔をしているように見えました。それでも彼らは今、目の前の香港を精一杯に明るく生きようとしているように見えました。